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2016.12.18 (Sun)

お客様との距離

(Akiko)

源利平(みなもとのとしひら) 事務処理担当の山東明子です。

先月、K様(関東在住の男性)から研ぎ・修理を承りました。
K様には以前にも2度ほど当工房をご利用いただいたことがあります。

今回お預かりしたのは出刃包丁と、木屋の両刃包丁です。

DSCN2052.jpg


小さい方の包丁(木屋)は研ぎと同時に傷んだ柄を交換させていただきました。
身(刃の部分)のサイズに対しては、本来
次の写真に写っている

DSCN2054.jpg

一番上のサイズの柄がバランスよく仕上がりますが、
写真に写っている一番下の大き目の柄が
お預かりした時点でついていたという事もあり、
「使い慣れておられる今までの柄と違和感が無いように」という思いと、
用途が野菜・果物用ではなく「魚の3枚おろし、5枚おろし」と伺ったので
写真のサイズで仕上げました。


一緒にお預かりした大きい方の出刃は
研ぎの時に一度、身(刃の部分)を抜いてなかごに付いているサビを落とし
取り外した水牛柄の中も掃除をして再度もとの柄を取り付けさせていただきました。
早めにサビを取り除いておくことで、柄を長持ちさせることができます。

と、言っても研ぎ・修理作業は私ではなく全て職人の夫が行いました。


私の主な仕事は
 ・店頭での接客
 ・お見積り等、遠方のお客様とのメールのやり取り
 ・電話対応
 ・修理に送られてきた刃物の荷ほどき
 ・ネットからご注文いただいた商品や修理後の刃物の梱包・発送
 ・請求書等書類の発行
 ・経理処理/在庫管理/顧客管理
 などなどです。

当工房に刃物修理を依頼してくださるお客様の業種はさまざまで、
刃物の用途を確認するときに「そのようなお仕事があるとは知らなかった~」と
新たな知識が増えることもあり、今のこの環境を
とても面白いと感じています。

また個人のお客様の趣味や世代もさまざまで
接客というよりは、「人と人のつながり」として楽しませていただいてるところがあります。

メールだけでやり取りするお客様とも、「チョットした何か」 がきっかけとなり
プライベートな話に発展することもあります。
でも、本業のお見積りや事務処理連絡を優先しているため、
パソコンで送れるEメール返信でありながらもプライベートな話題を含むものは、
切手を貼って送る郵便物よりずっと遅くなってしまう事もありますが。。。

いただいたメールを読むのが研ぎ・修理担当の夫と
私の二人だけでは勿体ないと思えるほど
上手な文章を書かれる方もおられ、
面白い短編小説を読むような興味深さを味わうこともあります。
バタバタとした日常の束の間、
お客様とのやりとりに元気をいただいております。

冒頭にご紹介したK様は
昨年の秋、インターネットを検索して包丁の修理を依頼してくださったのが
最初のきっかけです。
何度目かの事務連絡ついでに
「白内障の手術をして・・・」というK様の一文から
「私の母も白内障の手術をしたあと・・・」と、短く家族の事を書いて返信をし、
その後も、事務連絡ついでに数行プライベートな内容を付け加えたメールのやり取りとなり・・・
少しづつ話が展開していき、お目にかかったことが無いにも関わらず
お会いしたことがあるかのような親近感を覚えるまでになりました。
釣りがご趣味のようで、
2度目の研ぎ修理をご利用いただいた後には次のようなメールを頂戴しました。
 (昨年・2015年の11月の話です。)

=====
先ほど出刃二丁無事届きました。
予想にたがわず素晴らしい出来栄えで本当にお願いして良かった。満足です。
有難うございました。

今まで包丁は傷んだら廃棄するしか無い状況でしたが、
こうして修理をお願いすれば包丁は生き返り、
廃棄する必要は全く無いと考え直しました。

我々は素人釣り師でプロの料理人ではないので、
広がりにも限度がありますが、
少なくとも釣り仲間の連中には
今回山東さんにお願いした経緯を話し、
その出来栄えの素晴らしさ、パフォーマンスの高さを
教えてやりたいと思っています。

白内障手術後の復帰第一戦は11月17日(火曜)に決まり、
既に予約を入れました。
外房は大原港の釣り船が小生の定宿ですが、
現在ヒラメ釣り真っ盛りで、これから寒くなるに従い
3キロ以上の大型が顔を見せ始めます。

今回のお礼も兼ねて出来れば一枚お送りしたいと思ってますが、
釣り師の約束はカラ手形が多いので当てにせずお待ちください。

重ねて御礼申し上げます。有難うございました。


=====
 そして、年が明けてしばらくして、忘れかけていた3月のある日
 次のようなメールをいただきました。

=====
ご無沙汰しています。その後も商売繁盛、お忙しい毎日と存じます。
過日はお世話になりました。
研いで戴いた包丁はその後も大切に使わせて戴いており、
いまだに切れ味はシャープで錆もありません。

ところで、以下メールで以前お約束したヒラメの件、
大変時間が掛かってしまい申し訳ありませんでしたが、
本日漸くお約束を果たすことが出来ました。
自然相手の遊びの為、中々釣り人の思うようにはさせてくれませんでしたが、
本日春爛漫の房総沖に釣行が叶い、取って参りました。

=====
 とのことで、
メールをいただいた翌日、届いたクール宅急便を開けると
証明書とともに見事な天然のヒラメが入っていました。

証明書

包丁だけは各種揃っているので、素人ながらに夫が捌いて
近所に住む親せきも集まって皆でワイワイ楽しく・美味しくいただきました。

ひらめ

その後・・・ 今年(2016年)の秋、

このブログ記事、冒頭にある2本の包丁を研ぎにお送りいただき、
現物を確認したうえでお見積りのメール連絡をした時には

=====
ご連絡拝受。お忙しい中確認作業を頂きありがとうございました。
 ・
 ・
(中略)
 ・
 ・
また、外房では【どてら流し(横流し)】という、独特の船の流し方をするのですが、
所謂どてっぱら(船の横側)に風を当てて、その風の力で船を押し流します。
風が弱ければ船は流れず、狭い範囲しかポイントを探れませんが、
風が強くなればなるほど船は良く流れ広範囲のポイントを探ることが出来ます。

大阪方面ではほとんど見かけない釣法なのですが、
これが結構釣果を大きく左右する要因なんですね。

年明け以降の海上(特に早朝)は半端なく寒いうえに真っ暗で、
指先は縮こまり糸も容易には結べません。
一般の方から見れば、こんな環境で釣りをして楽しいの?と思うのが当たり前ですが、
極寒の暗闇の中じっと対峙してた竿先に【ガツガツガツ】という当たりが来ると、すべてを忘れます。
ほんとアホですよね。でもやめられません(笑)。

=====
 と、いうように私達の知らない釣りの世界を教えていただいたり。。。
 修理後の包丁をお返しした際には

=====
昨日包丁二本間違いなく受領致しました。
出来栄えも拝見。実に素晴らしい。完璧です。特に柄の修理をお願いした木屋は
まるで新品のようで、あんな古い包丁が蘇りました。このまま小生の釣り具棚に
飾っておきたいほどですが、使ってやるのが一番なので大事に使わせていただきま
す。作業を頂いた山東さんに感謝です。


=====
 との事で、

=====
これで何を一番に捌くかが問題です。
やはりヒラメか或いは鯛か、
はたまた現在当地(三浦半島沖)で釣れてる
ブリ級のワラサか(今年の魚は6キロあるのであと1キロでブリです)
悩ましいところです。


=====
 ともおっしゃっていました。

 そして直近のメールでは

=====
ところで、先日外房でマハタを釣ってまいりまして、
あまり大きくはありませんでしたが、二キロ程度の食べ頃サイズ。
一晩氷詰めにし寝かせた後、翌日捌きましたが、困ったことが・・・。

先日修理をしていただいた木屋を開けて、さあ捌こうかと思いましたが、
目がくらむような包丁の輝きに
 【いや、待てよ。これはもっと超高級魚を捌くときに・・・・】と、
再度包んで引き出しの中に。

ならば、前回山東さんにいただいた包丁でやるか、と考え、
大事にしまってあった箱を引っ張り出し、
包丁を取り出し切っ先のカバーをはずしましたが、
これまた余りの包丁の輝きに、
【いや、いや、待てよ・・・】となってしまい、
結局現在自宅で使ってる万能包丁(出刃よりも薄めの包丁)を
自分で研いで、それで捌きました。

いや~、直していただいてVery Happyなのですが、
包丁が綺麗過ぎてなかなか第一刀を下ろす勇気が出ず、
困ったことになりました。
世の中各人各様いろんな悩みがありますが、
こんな悩みを持つユーザーもいるんだということを、
一応お伝えしておきます(笑)。

そん所そこらの雑魚では役不足で、
上記包丁達にふさわしい魚を釣るまでは使えないという、
妙な状況に陥りました。しばらく思案が続きそうです。

=====
 との事。
 そこで、こちらから

=====
当方で行う研ぎの仕上げ方は、鏡面仕上げではなく、
実用性重視で道具としてお使いいただく用に仕上げておりますので
どうぞお気遣いなくご使用いただけましたら幸いです。
錆びたり、欠けたり、切れ味が悪くなった時は、
またいつでも修理を承ります。

=====
 とお返事させていただきました。

お客様との距離が近くなって嬉しい反面、
本末転倒な事態が起こることもあるのだなぁと、クスッっと笑ってしいまいました。

道具を大切にしていただけるのは嬉しい事ですが
他の皆さまも、お気になさらずお使いいただいて、
また修理の依頼をいただけましたら幸いです。

 源利平 山東(みなもとのとしひら さんとう)
 問い合わせ: 06-6636-3100
 定休日はホームページをご参照ください。
 http://www.hamono310.com/
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